このブログを読んでいる皆さんは、ハリー・ポッターの日本語訳版を読んだことがあるのではないでしょうか?
ハリー・ポッターの日本語版の翻訳者は 松岡佑子(まつおか ゆうこ) さんで、翻訳により日本でのハリー・ポッター人気を支えた一方で、その内容については「意訳・誤訳・珍訳が多い」という一定の批判も受けています😢
実は、自分がハリー・ポッターを英語で読んでみようと考えたきっかけは、「賢者の石」の第9章の次の文章に強い違和感を覚えたからでした 🧐
それが次の文章です↓
「どっちに行った? 早く言え、ピーブズ」フィルチの声だ。
「『どうぞ』と言いな」
「ゴチャゴチャ言うな。さあ連中はどっちに行った?」
「どうぞと言わないなーら、なーんにも言わないよ」
ピーブズはいつもの変な抑揚のある癇にさわる声で言った。
「仕方がない――どうぞ」
「なーんにも! ははは。言っただろう。『どうぞ』と言わなけりゃ『なーんにも』言わないって。はっはのはーだ!」「ハリー・ポッターと賢者の石」松岡 佑子 (翻訳) 静山社 (1999/12/1)
・「『どうぞ』言いな」ってあまりに直訳すぎないか?
・たぶん「Say please」とかの訳なのかな?
と子供心に感じたことを覚えてます😓
今回はこの文章が原書でどんな内容だったのか、どんな翻訳案があるのか確認してみましょう!
- 「『どうぞ』と言いな」の原文を読んでみよう!
- ‘Which way did they go, Peeves?’ Filch was saying. ‘Quick tell me.’
- ‘Say “please”.’
- ‘Don’t mess me about, Peeves, now where did they go?’
- ‘Shan’t say nothing if you don’t say please,’ said Peeves in his annoying sing-song voice.
- ‘All right – please.’
- ‘NOTHING! Ha haaa! Told you I wouldn’t say nothing if you didn’t say please! Ha ha! Haaaaaa!’
- 全体の解説まとめ
「『どうぞ』と言いな」の原文を読んでみよう!
英語の原文は次のような文章です↓
‘Which way did they go, Peeves?’ Filch was saying. ‘Quick tell me.’
‘Say “please”.’
‘Don’t mess me about, Peeves, now where did they go?’
‘Shan’t say nothing if you don’t say please,’ said Peeves in his annoying sing-song voice.
‘All right – please.’
‘NOTHING! Ha haaa! Told you I wouldn’t say nothing if you didn’t say please! Ha ha! Haaaaaa!’Rowling, J.K.. Harry Potter and the Philosopher’s Stone (English Edition) (p. 171). (Function). Kindle Edition.
☝️ 難しい単語も含まれていないので、大まかな意味は読み取れるのではないでしょうか 😊

この文章のポイントを解説します!

‘Which way did they go, Peeves?’ Filch was saying. ‘Quick tell me.’
日本語訳:「やつらはどっちに行った、ピーブズ?」とフィルチが言っていた。「早く教えろ。」
- Which way did they go?
→「彼ら(ハリーたちのこと)はどの方向へ行ったのか?」という意味の疑問文。
-Which way
は方向を尋ねる表現。
-did they go
は過去形の疑問文。 - Quick tell me.
→ 省略された命令文で、「早く教えろ」という命令。
-Quick
は副詞的に使われており、Quickly
の省略版のカジュアルな口調。
- 口語的な短いせっかちさが感じられる表現です。
‘Say “please”.’
日本語訳:「“お願いします”って言って。」
- ピーブズは「マナーを守れ」と皮肉っています(・∀・)
子どもっぽく、ちょっと意地悪な返答です。 - 命令文で、簡潔ながら相手を操作しようとしているのが特徴です。
‘Don’t mess me about, Peeves, now where did they go?’
意味:「ふざけるな、ピーブズ。さて、どこへ行ったんだ?」
- Don’t mess me about
→ イギリス英語の口語表現で、「からかうな」「ごまかすな」「ふざけるな」という意味。
- アメリカ英語では “Don’t mess with me” という表現もされます。 - Now where did they go?
→now
はここでは時間の意味ではなく、「じゃあ」「さて」と話の転換を示しています 👈️
→Where did they go?
は先ほどと同じ疑問文で、繰り返してしつこく聞いていることを表しています。
‘Shan’t say nothing if you don’t say please,’ said Peeves in his annoying sing-song voice.
意味:「“お願いします”って言わなきゃ、何にも言わないよ〜」と、ピーブズがいらっとする歌うような声で言った。
- Shan’t say nothing
→ “shall not say anything” の俗語・口語的な表現です。
→ ピーブズの おちゃめな言い回し・言葉遊び が表れています。 - in his annoying sing-song voice
→ “sing-song voice” は抑揚のある、わざとらしい歌うような声。
→ 子どもがからかうように話すときによく使われます。
→annoying
(いらっとさせる)で、ピーブズの性格がより伝わります 👻

文法的に正しい英語だと「Shall not say anything」なのに「nothing」になっているのがポイントだね
‘All right – please.’
意味:「わかったよ……お願いします。」
- 渋々言ったことが、簡潔な文と「All right」の使い方で現れています 🤨
please
を言うことが屈辱的であるかのように感じている様子が出ています。
‘NOTHING! Ha haaa! Told you I wouldn’t say nothing if you didn’t say please! Ha ha! Haaaaaa!’
意味:「なーんにも! ハハーッ! “お願いします”って言わなかったら『なんにも』言わないって言ったでしょ!ハハハー!」
- NOTHING!
→ 大文字になっているのは、大声でからかうように叫んだことを表しています 🗣️ - Told you I wouldn’t say nothing…
→ これも文法的には間違っている口語的な二重否定の表現です。
→say please
という条件を満たしても、結局「nothing」しか言わないという裏切りがジョークになっています👈️

ややこしいので少し整理しましょう😊
「I won’t say nothing.」は「二重否定(double negative)」と呼ばれる表現になっています。
- ✅ I won’t say anything.
→「何も言いません」(標準的な文法的に正しい表現) - ⚠️ I won’t say nothing.
→「何も言いません」(文法的にはおかしい表現)
文法上は「否定+否定=肯定」と解釈されるため、本来のルールでは肯定の意味になるはずです🤔
つまり、「I won’t say nothing.」を文法的にそのまま解釈すると「なにか言います」になるはずです。
しかし、その意味で解釈されることはなく、「何も言いません」という意味で使われることがほとんどです‼️
実際の会話(特にカジュアルな口調・方言・ラップなどの歌詞・キャラクター表現など)でよく使われる表現です 😊
このシーンではピーブズはあえて文法的におかしい「not say nothing」という表現を使って、フィルチが「please」と言ったのに、「NOTHING」だけ言ったというジョークになっています👻
全体の解説まとめ
このシーンは、
- ピーブズのいたずら心(言葉遊び、約束を守らない)
- 幽霊 vs 管理人 というコミカルな対比
が描かれた場面です。
ピーブズのセリフは英語の言葉遊び・皮肉が満載なので、翻訳ではそれをどう表現するかが難しいポイントです🧐
(そしてハリポタシリーズでは訳注がないので、日本語訳だけで英語のニュアンスを理解することはできません……)
でも、英語の原書を読めば細かいニュアンスもしっかり理解できるのでおすすめです!
このブログでは英語の原書を読めるように色々な英語解説を載せています😊
少しずつでも良いので英語版を手に取り読んでみてください👍️

それではまた次の記事で!
↓↓英語で読んでみたくなったらこの本も用意するのがおすすめ!↓↓
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