このブログでは Harry Potter を英語で読んでみたいという方々へ向け、様々なアドバイスや読み進める際のポイントを解説しています。
この記事は「ハリポタで学ぶ英文法」のはじめにです(シリーズの目次)。文法の単元に入る前に、ハリー・ポッターの英語がどんな英語なのかを整理しておきます。
原書を読み始めて、「学校で習った英語と、なんだか少し違う」と感じたことはありませんか。実は、文法のしくみそのものは同じです。違って見えるのは、物語ならではの書き方と、イギリス英語の書き方のクセがあるからです。

クセの正体が分かっていれば、原書で戸惑う場面がぐっと減ります😊
ハリー・ポッターの英語、4つの特徴
先に結論
- 地の文は「三人称・過去形」で語られる
- 会話は‘ ’で囲まれ、「said + 名前」の語順がよく出てくる
- イギリス英語で書かれている(つづり・単語・言い回し)
- 登場人物によって話し方がつづりで書き分けられている
特徴① 地の文は「三人称・過去形」で語られる
ハリポタの一文で見てみる
1巻9章、ハリーが初めてほうきで空へ飛び上がる場面です。
【原書使用例🧙】
He mounted the broom and kicked hard against the ground and up, up he soared, air rushed through his hair and his robes whipped out behind him – and in a rush of fierce joy he realised he’d found something he could do without being taught – this was easy, this was wonderful.
Rowling, J.K.. Harry Potter and the Philosopher’s Stone (English Edition) (pp. 158-159). (Function). Kindle Edition.
訳:「ハリーはほうきにまたがり、地面を強く蹴った。すると上へ、上へと舞い上がり、風が髪を吹き抜け、ローブが後ろへはためいた。激しい喜びがこみ上げるなかで、ハリーは気づいた。教わらなくてもできるものを見つけたのだ。これは簡単だ、なんてすばらしいんだ」
この一文には、過去形の動詞が次々に出てきます。mounted(またがった)、kicked(蹴った)、soared(舞い上がった)、rushed(吹き抜けた)、whipped(はためいた)、realised(気づいた)。さらに he’d found(= he had found)は過去完了で、realised はイギリス式のつづりです(つづりは特徴③で扱います)。
語り手は物語の外から、過去形で語る
会話ではない部分(地の文)では、語り手が登場人物を he / she / they や名前で呼びます。「わたし(I)」とは書きません。語り手が物語の外にいて、出来事を外から語っているからです。これを三人称の語りといいます。
- 一人称の語り:I walked to the station.
(わたしは駅まで歩いた) - 三人称の語り:She walked to the station.
(彼女は駅まで歩いた)
そしてもう1つの特徴が、地の文が過去形で書かれていることです。物語は「すでに起きたこと」として語られるので、読み進めると過去形だけでなく、次のような過去の仲間の形がくり返し出てきます。
- She was reading when the phone rang.
(過去進行形:電話が鳴ったとき、彼女は読書をしていた) - She had already left when I arrived.
(過去完了:わたしが着いたとき、彼女はもう出発していた)
会話の中だけは「話している時点」の時制
注意したいのは会話文です。会話は登場人物がその場で話している言葉なので、現在形や未来の形がふつうに使われます。
- ‘I’m tired,’ she said.
(「疲れた」と彼女は言った)
会話の中の I’m は現在形、地の文の said は過去形。1つの文に時制が混ざっているように見えますが、「セリフ」と「語り」で時間の基準が違うだけです。ここが分かると、原書の時制で迷わなくなります。
特徴② 会話の書き方にクセがある
会話を囲む記号は ‘ ’
原書では、会話が一重の引用符 ‘ ’ で囲まれています。
アメリカの文章では二重引用符 “ ” が基本で、イギリスの出版物は一重と二重のどちらを使うかが比較的自由だとされています。会話の中でさらに言葉を引用するときは、もう一方の引用符を使います。
読むときに気をつけたいのは、アポストロフィとの見分けです。don’t の ’ と、会話を閉じる ’ は同じ形をしています。
- ‘I don’t know,’ he said.
(「分からない」と彼は言った)
don’t の ’ は単語の一部で、know, のあとの ’ が会話の終わりです。’ のすぐ後ろに文字が続いていれば、たいていは don’t のような単語の一部だと覚えておくと迷いにくくなります。
「said + 名前」の語順
会話のあとに「〜が言った」を付けるとき、said(言った)や asked(たずねた)などのあとに名前が来る語順がよく出てきます。引用してきた原書の文を数えると、この形が31件ありました。
- ‘Let’s go,’ said Tom.
(「行こう」とトムが言った) - ‘Let’s go,’ Tom said.
(意味は同じ)
名前が主語なのに動詞が先に来るので、初めて見ると戸惑いますが、意味はどちらも同じです。主語が he や she のときは、he said の語順がふつうです。
また、‘Wait,’ she said, looking at her watch.(「待って」と、彼女は時計を見ながら言った)のように、うしろに「〜しながら」を付け足す形もよく出てきます。この looking の部分は分詞構文です。
特徴③ イギリス英語で書かれている
このブログで引用している原書(英語版のKindle版)は、イギリス英語で書かれています。とはいえ、文法のしくみはイギリス英語とアメリカ英語でほとんど同じです。違いの多くは、つづり・単語・発音と、「どの言い回しをよく使うか」にあります。
つづりと単語の違い
いちばん目につくのはつづりです。引用文の realised も、アメリカ英語では realized と書きます。
- colour(イギリス)/ color(アメリカ)… 色
- realise(イギリスで多い)/ realize … 気づく
- flat(イギリス)/ apartment(アメリカ)… 集合住宅の住まい
- holiday(イギリス)/ vacation(アメリカ)… 休暇
アメリカ式の color や realize というつづりは原書では出てきません。意味は同じなので、「u が入っている」「z が s になっている」くらいに受け止めれば十分です。
よく使う言い回しの違い
同じ文法でも、どちらの言い方をよく使うかに違いがあります。
- I’ve got a car.(イギリス英語の会話でよく使う)/ I have a car.(アメリカ英語でよく使う)… 車を持っている
- at the weekend(イギリス)/ on the weekend(アメリカ)… 週末に
- Have you finished it yet?(イギリスは現在完了が多い)/ Did you finish it yet?(アメリカは過去形も多い)… もう終わった?
have got の形は、原書の会話文にも出てきます。また、最後の例のようにイギリス英語では、アメリカ英語よりも現在完了がよく使われます。現在完了の考え方は、次の単元で扱っています。
アメリカ版はタイトルも違う
1巻は、アメリカでは Harry Potter and the Sorcerer’s Stone というタイトルで出版されました。アメリカの出版社の担当者が、philosopher(賢者・哲学者)という言葉は読者に古めかしく聞こえると考え、作者が提案したこのタイトルになったとされています。
本文でも、mum(お母さん)が mom に置き換えられるなど、一部の言葉がアメリカ英語に変えられました。このブログで引用しているのは、タイトルが Philosopher’s Stone のイギリス版です。Amazonなどで原書を買うときは、どちらの版かを確認しておくと安心です。
特徴④ 登場人物によって話し方が違う
会話文では、登場人物の話し方の違いがつづりそのもので書き分けられていることがあります。代表的なのがハグリッドで、なまりを表すために、単語のつづりが崩して書かれています。
初めて読むと知らない単語に見えますが、声に出して読んでみると、よく知っている単語だと分かることが多いです。辞書に載っていない形に出会ったら、まずは発音してみてください。
原書で確かめてみる
この記事で紹介した特徴は、原書を数ページめくるだけで実際に見つけられます。‘ ’ で囲まれた会話、said のあとに来る名前、colour のようなつづりを探しながら読んでみてください。
↓この記事で引用した原書はこちら↓
Harry Potter and the Philosopher’s Stone (English Edition)耳から英語に慣れたい方は、Audible版のレビュー記事もあわせてどうぞ🎧
まとめ
この記事の要点
- 地の文は三人称・過去形。会話の中だけは話している時点の時制
- 会話は ‘ ’ で囲まれる。don’t の ’ と見分ける
- 「said + 名前」の語順と、「〜しながら言った」の分詞構文がよく出る
- イギリス英語なので colour / realise / have got などの形が出てくる
- アメリカ版は、タイトルが Sorcerer’s Stone
原書で「知らない文法だ」と感じた部分も、ほどいてみると学校で習った文法の組み合わせでできていることがよくあります。このシリーズでは、そうした文法を学校で習った順番で1つずつ復習していきます📚️
参考:Cambridge Dictionary(British and American English/Punctuation/colour・realize・flat・holiday の項)、Wikipedia英語版(Harry Potter and the Philosopher’s Stone/Quotation mark)
続けて学ぶ
原書を読み始める前の準備については、ハリポタ原書を読むために必要なものもあわせてどうぞ📚️


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