このブログでは Harry Potter を英語で読んでみたいという方々へ向け、様々なアドバイスや読み進める際のポイントを解説しています。
「ハリポタで学ぶ英文法」の発展の文法 / 時制の発展の単元です(シリーズの目次)。今回は過去完了(had + 過去分詞)を扱います。
原書を読んでいて、had + 過去分詞が出てきた途端に、話の時間の流れが分からなくなる——そんな経験はありませんか。日本語にすると「〜した」「〜していた」になり、ふつうの過去形との差が消えてしまうからです。
ハリー・ポッターのシリーズは、語り手が登場人物の行動を「彼は〜した」と三人称・過去形で語っていく小説です。語りの「いま」がすでに過去なので、その流れより「ひとつ前」のことを書くときは、現在完了ではなく過去完了になります。原書の地の文(セリフ以外の部分)で、現在完了より過去完了をよく見かけるのはこのためです。

過去完了は「過去の、さらにひとつ前」を示す印です。時間を一段さかのぼる合図だと思ってください🕰️
過去形だけでは、順番が伝わらない
まず、過去形と過去完了を並べてみます。
- When I arrived at the station, the train left.(駅に着いたとき、電車は出ていった)… 着いてから出発した
- When I arrived at the station, the train had left.(駅に着いたとき、電車はもう出てしまっていた)… 着く前に出発していた
どちらも過去の話ですが、起きた順番が逆です。過去形どうしなら「着いて、それから出た」と順に読むのが自然で、その前に済んでいたことには had + 過去分詞を使います。
基準にしている過去の時点を、この記事では基準点と呼びます。上の例なら「駅に着いた」ときです。過去完了は、基準点より前を表す形です。
ハリポタの一文で見てみる
1巻16章、マクゴナガル先生がハリーたちの話を聞いて驚く場面です。
【原書使用例🧙】
Whatever Professor McGonagall had expected, it wasn’t that.
Rowling, J.K.. Harry Potter and the Philosopher’s Stone (English Edition) (p. 281). (Function). Kindle Edition.
訳:「マクゴナガル先生が何を予想していたにせよ、それではなかった」
had expected は、物語の「いま」より前
- had expected(予想していた)… 物語の「いま」より前にあった予想
- wasn’t(〜ではなかった)… 物語の「いま」に実際に起きたこと
先生が予想していたのは、実際に話を聞くより前のことです。時間の順に並べれば「予想する → 話を聞いて驚く」。先に起きたほう(予想)に had が付き、物語の「いま」に起きたこと(それではなかった)は過去形のまま、という書き分けになっています。
もしどちらも過去形だったら、予想と「それではなかった」が同じ時間に並んでしまいます。had があるから、「予想は先に済んでいた」と伝わるのです。地の文が過去形で進む物語では、登場人物の予想・記憶・事情のようにすでに済んでいたことを説明するとき、had + 過去分詞が「ここは話の流れより前に戻っている」という目印になります。
作り方と、4つの意味
作り方は had + 過去分詞
主語が何であっても had のままです。現在完了のように has / have を使い分ける必要はありません。否定は had not(hadn’t)+ 過去分詞、疑問は Had + 主語 + 過去分詞です。
意味は現在完了の3つと、「ひとつ前」
- 完了・結果「〜してしまっていた」… その時点までに終わっていた
- 経験「〜したことがあった」… その時点までの経験。never / before が目印
- 継続「ずっと〜していた」… その時点までずっと続いていた。for / since が目印
- ひとつ前の出来事(大過去)… 語っている出来事より前に起きていた。引用文の had expected はこれ
現在完了との違いは「基準点」だけ
| 現在完了 | 過去完了 | |
|---|---|---|
| 形 | have / has + 過去分詞 | had + 過去分詞 |
| 基準点 | いま | 過去のある時点 |
| 意味 | いままでに〜した・いままで〜している | その時点までに〜していた |
| 原書で出てくる場所 | 主にセリフ(‘ ’ の中) | 主に地の文(語りの部分) |
- Ms. Sato has worked in Tokyo for ten years.
(佐藤さんは東京で10年働いている)… いままで続いている - Ms. Sato had worked in Tokyo for ten years when she moved to Osaka.
(佐藤さんは大阪に移ったとき、東京で10年働いていた)… 移った時点まで続いていた
基準点を「いま」から「過去のある時点」へずらしただけです。だから過去完了の文には、基準点になる過去の出来事や時点が、文の中か前後の文にあります。
迷ったらこれだけ
- まず、基準点になる過去の出来事(時点)を探す
- その基準点より前に済んでいたこと・続いていたことに had + 過去分詞
- 目印になる言葉:by the time ~ / by + 過去の時点 / already / never ~ before
原書の地の文で過去完了が多いわけ
登場人物がセリフで話すときの「いま」は、その場面の現在です。だからセリフには現在完了が出てきます。ところが語り手は、同じ場面を過去形で語ります。語りの基準点が過去にあるので、セリフなら have になるところが、地の文では had になるのです。
- ‘I have finished the report,’ she said.
(「報告書は書き終えました」と彼女は言った)… セリフの中は現在完了 - By then, she had finished the report.
(そのときには、彼女は報告書を書き終えていた)… 語りでは過去完了
そのため原書を読んでいると、地の文では現在完了より過去完了のほうをよく見かけます。現在完了が出てくるのは、主に登場人物のセリフ(‘ ’ の中)です。原書を読むときは「地の文の完了形は過去完了」と覚えておくと、時間の流れを追いやすくなります。
読むときに迷う2つの場面
① 過去形だけで済むこともある
順番が言葉のうえで明らかなら、過去形だけでも通じます。before や after が、順番を教えてくれるからです。
- He checked the figures before he sent the email.(メールを送る前に、数字を確認した)
- After the meeting ended, we went back to our desks.(会議が終わってから、席に戻った)
had を使って After the meeting had ended と言うこともできます。反対に、when だけでつなぐときや、順番が書かれていないときは、had の有無で意味が変わります。「彼女は〜と言った」のあとで had が出てくる形は、時制の一致の回(準備中)で扱います。
② ’d は had か would か
会話文に出てくる短縮形 ’d は、had にも would にもなります。見分けは、’d のうしろの形を見るだけです。
- ’d + 過去分詞 → had She said she’d finished the report.(報告書は書き終えたと彼女は言った)
- ’d + 動詞の原形 → would She said she’d call me later.(あとで電話すると彼女は言った)
would のうしろには必ず原形が来るので、過去分詞の形が続く ’d は would ではありえません。例外は2つです。
- ’d better は had better(〜したほうがいい)。うしろが原形でも had です。
- come / run / become のように過去分詞と原形が同じ形の動詞は、形では見分けられません。She’d come early. は「早く来ていた」とも「早く来るだろう」とも読めるので、文脈で判断します。
例文でもう2つ確認
例文① 着いたときには、もう終わっていた
- By the time I got to the office, the meeting had already started.
(私がオフィスに着いたときには、会議はもう始まっていた)
by the time ~は「〜するまでには」。基準点は got to the office(着いた)で、会議が始まったのはその前です。already が「その時点でもう済んでいた」を強めてくれるのは、現在完了と同じです。
例文② それまでに一度もなかったこと
- We were surprised because we had never received such a large order before.
(私たちは驚いた。それまで、こんなに大きな注文を受けたことが一度もなかったからだ)
「驚いた」ときが基準点で、そこまでの経験を had never received が表しています。because でつなぐ理由の部分は、出来事より前の事情を説明するので、過去完了が使いやすい場所です。
TOEIC形式で確認してみる
Part 5と同じ4択です。先に、基準点になる過去の出来事を探してください。
- By the time the client arrived, we _______ the presentation.
(A) finish (B) have finished (C) had finished (D) finishing - The shipment had already _______ when we called the warehouse.
(A) leave (B) left (C) leaving (D) leaves - Our sales _______ steadily for five years before the new store opened.
(A) have grown (B) had grown (C) grow (D) will grow
解答と解説
1. 正解 (C) had finished
arrived が基準点で、準備が終わったのはその前なので過去完了です。(B) have finished は基準点が「いま」の形なので合いません。
2. 正解 (B) left
had のうしろは過去分詞。leave – left – left なので left です。作り方そのものを問う問題です。
3. 正解 (B) had grown
opened が基準点で、その前の5年間伸び続けていた(継続)ので過去完了です。for five years が継続の目印。(A) have grown だと基準点が「いま」になってしまいます。

まず基準点(過去の出来事)に線を引く。そこより前の話なら had + 過去分詞です👍️
もっと問題を解きたい人へ
過去完了は、現在完了と並べて解くと違いがはっきりします。基準点を探す習慣がつくまで、同じ形の問題を続けて解くのが近道です。
[音声DL] TOEIC L&Rテスト 文法問題 はじめの400問(TEX加藤)↓この記事で引用した原書はこちら↓
Harry Potter and the Philosopher’s Stone (English Edition)まとめ
この記事の要点
- 過去完了は「基準にした過去の時点より、さらに前」を表す形
- 作り方は had + 過去分詞。主語が何でも had
- 意味は完了・経験・継続と、語っている出来事よりひとつ前の出来事
- 現在完了との違いは基準点(いま/過去のある時点)だけ
- 三人称・過去形で語る原書では、地の文の完了形は had + 過去分詞(現在完了は主にセリフに出てくる)
- before / after で順番が分かるときは、過去形だけでも通じる
- ’d は、うしろが過去分詞なら had、原形なら would(’d better は had better)
過去完了が見えると、物語の時間が前後に行き来していることに気づけるようになります。地の文が過去形で進む原書では、had + 過去分詞が「ここは少し前の話」という合図になってくれます📚️


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